増田勇一氏によるNEMOのExclusive interviewが公開! |

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2022.05.27

増田勇一氏によるNEMOのExclusive interviewが公開!

――先頃、ルーマニアのPest Recordsから『Live At Death Valley』が発売になりました。昨年6月に配信された同名のライヴの音源がCD化されているわけですが、そもそもあのライヴは作品化を想定していたものではなかったはずですよね。まずはそのリリースに至る経緯から聞かせてください。

NEMO:自分たちが契約しているヨーロッパのエージェントと、週に2~3回はオンラインでミーティングしているんですけど、その中で「そろそろニュー・アルバムを出したい」という意向をまず伝えたんですね。というのも、まず日本でアルバムを出して、のちにそれをヨーロッパで出すというこれまでの流れを、逆にしたいと考えていて。だからまずヨーロッパでの発売元レーベルを決めたいという話をしたんです。するとエージェントの社長から「ならば新作の前に取っ掛かりになるものを出したらどうか?」という提案が出てきた。ただ、まだ現時点では、こちらにはまとまった量の新音源がない。そう伝えると「君たちには最高のライヴ素材があったはずだと思うんだけど?」と言ってきたんです。「SURVIVEはこれまでライヴ・アルバムを出していないんだし、あの音源を初のライヴ・アルバムとして出すことを前提にレーベルを探してみようじゃないか」と。実際、ライヴ音源は全8曲しかなかったんですけど、そこにデジタル・シングルとして出していた『The Road To Hell Is Paved By Good Will』の音源をボーナス・トラックとして加えれば量的にも充分なんじゃないかという話になり、そこからエージェント側がレーベル探しに着手してくれたんです。

――そしてPest Recordsとの話がまとまった、と。エージェント側としてはこの先にSURVIVEがヨーロッパでのツアー活動を再開していくうえでも新しいリリース・アイテムが欲しかったということなんでしょうね。

NEMO:そうですね。しかもすぐに通常通りのライヴ活動が再開できるわけではないから、最高のライヴ素材があるならそれを出すのが最良の策だろう、と。だからその社長が、あの配信ライヴの映像を見ていたことが大きかったですね。

――そして発売元が決まり、CD化され……アートワーク等はレーベル側が制作しているんですよね? ジャケットの表面にタイトルと呼応するように『死の渓谷』という文字が大きく配置されていたりして、いかにも欧米人によるデザインだなと感じさせられます。

NEMO:そうですよね。当然、デザイナーとも打合せをしてるんですけど、やっぱり向こうの人だなと思ったのは「君たち日本人の漢字文化というのはホントにクールなんだから、それを使わない手はない」と漢字のフォントを要求してきたことで。それでこちらからごく普通のなんてことない書体で『死の渓谷』というのを送ってみたところ、後日、向こうでそれを変換していろいろとアレンジしたものを返送してきて。なかには「漢字でこのフォントはあり得ないだろ!」と言いたくなるような可愛らしげなものとかもあったんですけどね。ただ、とにかく漢字は絶対使いたいと言われました。

――実際のところ、あのロケーションでのライヴには「ライヴであってライヴではない」部分があったように思うんです。当然ながら無観客だし、ライヴ映像収録というのにも近いところがあった。演奏自体は完全にライヴではありますが、ライヴ・アルバムというと曲間の歓声とか観衆による合唱とか、そういった臨場感が本来はスパイスになってくるものなのに、それが一切ないわけで。

NEMO:確かに。ただ、結局はそれが「コロナ禍におけるライヴのあり方」のひとつだったということだと思うし、そこはこのご時世ならではのライヴ・アルバムという解釈でいいかな、と自分の中では納得してますね。実際、これまでライヴ・アルバムを出そうと考えたこと自体、ほぼなかったんです。やっぱりライヴはリアルタイムで楽しむものだという感覚が自分の中にはあって。ブートレッグ映像とかを見るのは好きなんですよ。誰かが撮った映像が編集も脚色もない状態で勝手に横流しされたものを見るのは。ただ、ライヴ盤なり映像作品なりを出す前提でやるライヴって、もはやその時点で「作られたライヴ」みたいなところがあるじゃないですか。たとえば通常のライヴだったら感情が高まってギターを弾かなかったりする場面とかが出てくることもあるのに、そこで「ヤバい。今日のライヴは収録されてるからきちんと弾かないと」みたいな意識が働いてしまう。そうなってくるともはやライヴではないというか、観客を前にしたレコーディングでしかない気がするんです。サプライズさえも演出されたものになってくるというか。そういう部分に抵抗があって、これまではライヴ盤を出すってことについてあまり食指が動かなかったんです。過去、一度だけライヴDVDを出したことがあるんですけど、それを経たうえでそう感じるようになって。

――なるほど。改めて聞いておきたいんですが、現時点においてあの日のライヴ自体をどんなふうに記憶していますか?

NEMO:とにかくあのロケーションに感動してましたね。実のところあのデス・ヴァレーは千葉の屏風ヶ浦なんです。東洋のドーヴァー海峡というすごい別名もあるようなんですけど(笑)。あの絶景に触発される部分というのは確実にありましたね、そこにオーディエンスが居なくても。やっぱり人間も所詮は動物で、ああいう場所で空気を吸い、太陽を浴びると、エネルギーが満ちてきて、それこそ全裸になって原始人みたいな感覚で演奏すべきなんじゃないかと思えたくらいで。ホントに気持ちが解放されるというか。そんな絶景の中、波の音も聞こえてくれば、頭上には鳥が飛んできたり(笑)。だからお客さん不在でも楽しかったんですよ。有観客でライヴをやる時とは違うエネルギーが湧き出てくるというか、大自然を相手にしてるという気分を味わえましたね。あそこで鴉の大群でも来たらもっと面白かったかもしれない(笑)。

――それはちょっと怖くもありますが(笑)、実際の演奏時はかなりの音量が出ていたんですか?

NEMO:ちょっとしたフェスぐらいの音は出していたはずです。野外独特の、音が響いて回る感じがあって、それも気分を高めてくれましたね。だからまずは自分たちが満足しましたし、あの試みは間違ってなかったなと思ってます。

――しかもそれが今回のライヴ・アルバムという価値ある副産物を生むことになったわけですからね。ボーナス・トラックとして収録されているシングルの楽曲群についても、そもそもデジタルでのリリースでしたし「盤で欲しい!」と感じていた人たちも少なくなかったはずで。

NEMO:若干そのことも頭にありました。今、デジタル配信自体は簡単にできるじゃないですか。リリース当時は、このご時世だしデジタル・シングルでいいだろうと思ってたんですけど、やっぱり後になって「盤でも出しておくべきだったな」という気持ちが出てきて。ただ、そこで2曲だけというのも寂しいし、そこにさらに2曲ほど加えて、デジタル・シングルとは差をつけてみたんです。今回、このアルバムは日本盤という形では出ないんですけど、僕が運営している自主レーベルで輸入する形をとって、そこから販売しています。

――実際、ライヴ・アルバムというものには上級者向けのアイテムというか、オリジナル・アルバムの数々をすでに持っている人たちのためのもののようなイメージもありますが、今作はSURVIVEを知らずにきた初心者にとってもわかりやすい作品なんじゃないかと思えます。

NEMO:まさに。当然のように『Human Misery』と『Immortal Warriors』の楽曲中心で、その2枚を代表するものが散りばめられているんで、最近の自分たちのライヴを凝縮したかのようなものになっていて。だからある意味、手を出しやすいアルバムでもあると思う。僕自身、自分たちがライヴ・アルバムを出すことについては消極的でしたけど、それを聴くことは好きなんですよ。ブラック・アルバム当時のMETALLICAが、シングルを出すたびにライヴ音源をカップリングで入れてましたよね? あれを毎回集めていたくちなんで。たまにそのライヴ音源と同じ日のブート映像を手に入れたりすると、両方を同時再生するなんていうマニアックな遊びも楽しんでましたね(笑)。当時は自分から手に入れようとしないとライヴ映像なんて見られませんでしたから。YouTubeで何でも簡単に見つかる今とは違って。

――そう考えるとライヴ映像や音源の価値というのも変わってきているのかもしれませんね。だからこそ作品として出すからには本当に質の高いものであるべきでしょうし。ところで冒頭、さりげなく「そろそろニュー・アルバムを」という言葉が出てきましたけども、「Immortal Warriors」に続くアルバムに向けての準備も始まっているんですか?

NEMO:そうですね。すでに新曲が10曲ほどあります。今回またちょっと新しい作曲方法を試していて。まずはGAKUと2人で全パートをデジタルで作り、それがまとまった時点で他のメンバー達にも投げて、今度はその曲をバンドできちんと演奏できる状態になるまでスタジオで徹底的にセッションする。そうやって詰めていったうえで録るんです。『Immortal Warriors』とかでは特にデジタルな作り方をしていて、確かにすごく満足のいく精度の高いアルバムにできたと自負してるんですけど、後になってそこに少しばかり物足りなさを感じるようになって。あまりにも整合性が高すぎると、人間ならではの不完全さからくるエネルギーが感じられにくくなる部分があるというか。

――難しいもんですよね、その両方を求めようとすると。

NEMO:ええ。だから次のアルバムについては、曲の原型はデジタルで作るものの、レコーディング自体は昔みたいな録り方でやってみようかという話になっていて。その場で発生するノイズ、そこから派生する倍音みたいなものすらもちゃんと録りたいというか。ちょっと荒々しいものにしたいという欲求が高まってきてますね。ある意味、時流には逆行してるのかもしれませんけど。昔って、「音源はそうでもないけどライヴがとにかくすげえ!」みたいなバンドが多かったじゃないですか。それこそ若かりし頃のSEPULTURAとか、まさにそうでしたよね。そういった凄味を感じさせるバンドがあまりにも地球上から居なくなってしまってる(笑)。そこで自分が心底好きなそういうバンドでありたいし、そういう作品を作りたいなと思っていて。もちろん音源自体はきっちりと作りますけど、そこで「これはライヴがすごそうだぞ」と想像させるようなものにしたいな、と。

――そういう意味では今回ライヴ盤が出るというのも理に適っているというか、次のアルバムに向けての良い導入になりそうですね。

NEMO:そうですね。べつに深く考えての計画ではなかったんですけど、やはり何事も人間の考えていることが基になっているわけで、そうやってひとつひとつのことにリンクする部分が出てくるものなんでしょうね。

――確かに。そして気になるのは『METALLIZATION Ⅲ』です。コロナ禍の影響で昨年10月の開催が叶わず延期措置となり、この9月3日に実施されることになるわけですが。

NEMO:今回はこのイベント本来の2ステージ制に戻し、出演バンドも増やします。1回目と同じような形態でやろう、と。そこは会場側とも何度も話を重ねながら調整してきました。去年開催できなかったのは、本当に残念でならなくて。ちょうどあの時期、感染者数の増加傾向もすごかったじゃないですか。『METALLIZATION』をこの先長く続けていくうえでもどうにかしてやりたいというのがあったし、そこではすごく葛藤もあったんです。だからその延期が決まった時、「次回はたとえ状況的に100人しか観客が入れられなかったとしても、本来の形でやりたい」と自分の中では決めていて、会場側にもそれを伝えていて。

――そこにこだわりたかった理由というのは?

NEMO:もちろんこの状況下、アーティスト側も大変な思いをしてきたわけですけど、お客さんの側もそれは同じことだろうし、そんな中で楽しみに待ってくださっていた人たちに対して「とりあえず」のものしか提供できないのはちょっと違うんじゃないか、と感じたからで。ただでさえ高いチケットを買ってもらって観に来てもらうのに、マスク着用とか声出し厳禁とか、規制だらけの状態で観てもらわなければならないわけですよね、少なくとも現状では。そこで少しでも楽しい想いをしてもらうには、なんとか本来の形での『METALLIZATION』をフルに近い形で提供するしかないと考えたんです。正直、昔はこんなこと考えず「今が良ければそれでいい!」みたいなスタンスに近かったですけど、この状況下で観に来てくれる人たちにはとにかく最高の想いをして帰ってもらいたい。たとえそれが何人であっても。そういった想いが僕自身の中で強くなってきましたね。もしかしたらコロナ禍の中で、人に対してやさしくなったのかもしれない(笑)。正直な話、採算度外視のところはあります。だけど仮に大赤字だったとしても将来的に挽回可能な範囲内ではありますし(笑)、ここは思い切っていこう、と。出演ラインナップについても第二弾、第三弾とか勿体をつけて発表していくんじゃなく、「これで全部です。これが観たい人たちは全員来てください!」という勢いで当日まで進んで行くつもりです。

――ただ、現状、出演ラインナップの最後に「and more」という但し書きが付いていますが?

NEMO:それは単純に調整というか回答が遅れている人達です(笑)。とにかく自分たちとしてはこの『METALLIZATION Ⅲ』を納得のいく形でやりきって、2023年に向かっていくつもりです。もうすでにその計画も固まりつつあるんで。そういえば8月14日には『METALLIZATION Ⅲ』の前哨戦というわけじゃないですけど、SINJILOW(b)の生誕50周年記念ライヴもあるので、そちらも楽しみにしていてください。

取材/文 増田勇一

Pest Records Bandcamp : https://pestrecords.bandcamp.com/album/survive-live-at-death-valley

SURVIVE Official Store : https://buyhard.rebel-survive.com/

 

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